韓国の有機農業と学校給食、いすみ市の事例
韓国では1990年代後半から、国策として有機農業が振興され、国内の農業でしっかり位置づけれています。(新環境農産物)
1998年に親環境農業育成法を制定、翌年からは、親環境農業の実践農家への直接支払制度を始めました。2016年には、生産された親環境農産物の3~4割が学校給食に使われ、学校給食に使われる食材の半分以上を親環境農産物が占めています。
親環境農業は、“持続可能な農業により、農業と環境を調和させ、農産物の安全性と環境保全を両立させる農業”を指すとされており、生産された農畜産物は「親環境農産物」と呼ばれ、さらに「有機農産物」、「有機畜産物」、「無農薬農産物」、「抗生剤無畜産物」に分類されるそうです。2015年まで「低農薬農産物(日本の減農薬栽培)」もあったが、農薬の使用量をどの程度減らしたものか消費者にわかりにくいという理由で、廃止されたそうです。
・有機農産物:有機合成農薬と化学肥料を一切使わずに栽培され、多年生の作物は3年、それ以外の作物は播種前2年という転換期間を経た農産物をいう
・有機畜産物:有機農産物の栽培・生産基準にあわせて生産された有機飼料を給餌し、認証基準に従って生産された畜産物
・無農薬農産物:有機化学合成農薬を一切使わず、化学肥料の施肥量を推奨されている量の1/3以内に抑えた農産物
・抗生剤無畜産物:抗生剤、合成抗菌剤、ホルモン剤が添加されていない飼料を給餌し、認証基準を守りながら生産された畜産物
これらの農産物には種類別にマークがあり、商品に表示することができます。そして親環境農業に取り組む農家には、直接支払いがおこなわれますが、直接支払いは認証取得とセットになっており、直接支払いの予算はすべて国庫で賄われています。
しかしながら認証を取得した親環境農産物(有機農産物及び無農薬農産物)の面積及び出荷量の推移は、2000年代は順調に伸びたものの、2010年をピークに減少傾向となり、思った通りにはマーケットが広がらず、結果的に供給過多となってしまいました。
一方、学校給食での親環境農産物の需要は2000年以降伸び続けています。2010年以降勢いを失いかけた親環境農産物の需要を、学校給食がうまくカバーしました。韓国の(株)地域農業ネットワークのパク・ヨンボム代表は、「地域農業と学校給食の連携活性化方案」の中で、「販路開拓の難しさや消費者に付加価値が伝わりにくいという事情を抱えていた親環境農産物が、学校給食という受け皿ができたことで、好循環が生まれる可能性が高まった」と指摘されています。しかし一方では、学校給食という公共調達がなければ市場を維持できかねないという見方もできるでしょう。 (参考:AGRI FACT)
続いていすみ市ですが、実際に視察に行ってポイントとなるのは「営農指導」「販路開拓」「給食の受給コーディネート」「認証取りまとめ」と感じました。いすみ市や木更津市など、お米の産地であることから米飯のオーガニック化を推進している自治体が多いため、佐倉市は有機野菜でも特徴を出していきたいなと思うところです。欠品対応など栄養士さんに丸投げするのであれば協力を求めることは難しいため、学校給食の有機野菜の取り扱いについては農政課の職員がコーディネーターを担うことで「教育委員会に負担はかけない」ということを訴えて、教育委員会の重い腰を上げさせるしかないのではないかと思っています。
いすみ市では農林課の職員がコーディネーターとして来月の献立で使用する有機野菜にチェックを入れて、有機農家が青果に持って行き、その他の野菜は既存業者が担うといったように共存しながら給食食材の納入を行っています。不足調整などはまず直売所で対応し、無理なら他の業者で対応すると言ったコーディネートは農林課の職員が行うと言うことです。
最後に、有機農業の取り組み面積を拡大していくためには学校給食と言った公共調達と、それに伴う購買意識の変化が必要ではないでしょうか。その点においては国の交付金が3年しかないもいかがなものかと思いますが、学校給食に有機食材を導入し、新規就農による耕作放棄地の削減と定住促進を促し、佐倉市の農業の継続と発展、そして都市部と農村部の融合したまちづくりを目指して参ります。