発達障害の早期発見と学習障害を考える~繰り上がりができなければ計算機を使えば先に進めるのに~

 私は子どもの発達障害や学習障害はできるだけ早めに発見されたほうがいいと思っている。本来であれば子どもが発達障害の診断を受けたら、社会のあらゆるリソースが手を差し伸べる体制が理想だが、日本はその点遅れているようにも思える。小学校では「インクルーシブ教育」のもと、特別支援学級で障害のあるお子さんが受け入れられ、できることは普通級の「交流学級」で行われているが、お客さま感は否めない。そして中学生になって、この子が社会人としてどのように自立していけるのかという先の見通しが立つご家庭はどの程度あるのだろうか。また、保護者自身がお子さんの「個性」に目を背けているケースもある。全ての子どもたちが自分の障害特性と向き合いながら、社会の一員として成長していけるような環境作りをしていかなければならない。

 現状の乳幼児健診は3才児健診までである。そこから就学時健診までは個々の相談に委ねられる。私は発達障害の早期発見のためにも5才児健診の導入を提案しているが、国の号令でもないとなかなか難しいため、平成28年度から5才の誕生月にお子さんの発達に関する相談の有無について確認をするという代替え措置を行っている。最初の年度の相談は確か7件だったと思うが、今は平成30年度30人、令和元年度42人、令和2年度52人と増加傾向となっている。この5才児での確認がきっかけになっていることは間違いない。

 そして平成30年の小学校入学時前の就学時健診から、子どもの発達障害を早期に発見するため、就学時健診の実施方法が見直され、乳幼児健診との連携も可能になった。佐倉市がどのように対応しているのか議会質問してみると、就学時健診の見直しは実施していないが、就学前に教育センターに相談があったお子さんに関してはもちろん、園の要請でも確認に行き、小学校に情報共有しながら受け入れ態勢を整えているとのことだった。先の子どもの権利条例のところでも述べたが、幼保小の連携により、学校側が幼児の現場に歩み寄り理解してくことは重要である。

 小学校まではなんとかなっていた学校生活も、学習障害を抱えていると、中学校に入学してから辛くなる。平成24年に通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査が行われ、学習面で著しい困難を示す推定値は4.5%、その中でも読むことと書くことに著しい困難を示す割合が全体の2.4%、計算する、または推論することに著しい困難を示す割合が2.3%となっており、また10年後となる来年調査が行われる予定であるが、その中で、いずれの支援も受けていない児童生徒が、短絡的だが38.6%いるのではないかという推定値が出ている。これらの数値を佐倉市に当てはめると、およそ200人程度の児童生徒がなんらかの学習障害の困難を抱えているのではないかと推察するのである。

 中学生で黒板の板書を書き写せないのであれば、1人1台導入したタブレットを活用して、書くのではなく入力することで解決できることが多いという認識は広がってきたのではないかと思っているのだが、果たして活用されているのか。また、繰り上がりの計算が
できない状態で中学生になってしまった生徒。計算以外のことはできるのに、そこで自己肯定感とともにつまずいたままの生徒は計算機を使えば前に進める。ずるではなく、いわゆる補助代替支援である。そういったことに対してほかの生徒の理解が広がることが本当のインクルーシブであり、生徒を困った感から救う一つの手段でもあると思うのだが、その辺の配慮が行き届いているのか、教育委員会と学校現場の認識の差も気掛かりである。

 平成28年8月議会で提案した中学校での校内型適応指導教室については全校で開設が実現したものの、その存在を知らない行き渋り状態の生徒の保護者が知らなかったことには驚いた。現状は誰にも会わないように登校し、授業のない先生が適応指導教室で生徒の指導にあたっている。不登校の生徒はもちろんだが、普通級にいる学習に困難を抱える生徒も自由に来れる場所にはならないものだろうか。特別支援学級と普通級の間の教室である。そして現在保護者の工夫に委ねられている十人十色の学習方法について、教師も学年ごとにチームを作り、学習障害の観点で情報共有と対応を考えるといった教師側の研鑽も求められる。

 適応指導教室だって楽しくないと。