発達障害と学習障害
2017年年1月、総務省の発達障害者支援に関する行政評価・監視〈結果に基づく勧告〉により、発達障害者の早期発見が不十分あるという指摘がされました。国立成育医療研究センターの東京小児科医会学術講演会でも、5歳児健診で発達障害が疑われた児童の平成26年度の割合は平均9.6%、24年度の3歳児健診時に発達障害が疑われた児童の割合と比較すると1.8ポイント増加しおり、単純に比較はできませんが、3歳児健診では発見されなかった発達障害が疑われる児童が新たに発見されている可能性があると考えられるとの報告がありました。5歳児健診は、自治体の任意の取組となっているため、佐倉市では導入されていませんが、注意欠陥多動性障害などの発達障害は多くの児童が保育園、または幼稚園で集団生活に慣れ始める5歳頃までにその特性があらわれるとされているため、3歳児健診では発達障害が疑われる児童を見逃しているおそれがあります。
2018年には小学校入学時前の就学時健診から、子どもの発達障害を早期に発見するため、就学時健診の実施方法が見直され、乳幼児健診との連携も可能になりました。しかしながら佐倉市の教育センターでは、従前より関係機関と連携を図りながら情報を共有し就学相談に当たっており(関係機関とは?)、必要に応じて園訪問を行い、子どもの様子を直接把握し、就学先の小学校と情報を共有している。ほかにも市内各園及び療育機関へ教育センターの機能を紹介しており、連携強化を図りながら早期発見に努めているため、改訂に伴う就学時健診の見直しは実施していないとのこと。
就学時健診で発達や学習の困難が専門家により発見できれば、保護者の理解につながります。家庭内で「子どもだから」と見過ごされていた子どもの困難を保護者が認識し、適切な支援に繋げることができるかも知れません。困るのは子ども本人です。子どもにとって最善の利益となるために常に見直しは必要ではないでしょうか。
広報公聴委員会で行った子育て世代へのアンケートでも、発達に不安を感じている保護者の不安が伝わってきます。私は佐倉市内で唯一の発達凸凹親の会を運営しており、これまではメンバーの繋がりだけで23人のLINEグループにより月1のおしゃべり会を開いてきましたが、今年は講演会のようなものを開いて多くの保護者に情報を届けたいと思います。
幼保と小の連携も大切ですが、小と中の連携も重要です。公立中学校に進学した普通級の生徒も学習障害を抱えている生徒も少なくありません。佐倉市の小学校はわりと手厚いのですが、ユニバーサル的な考え方は中学校では大きなギャップがあり、浸透していない感があります。それに加えて中学校に入学すると学習内容が難しくなり、学校生活に子どもたちがしんどさを感じて不登校に繋がることも。教員自身がどれだけ学習障害等を理解しているのか?疑問です。ただ教員は時間的に学習障害の生徒にまで対応ができないというのも実情のようです。
ジェンダーのところでも書きましたが、学習障害の児童生徒は補助代替支援として計算機やタブレットなどの補助教材を使用することは認められてはいます。でもまだまだ周りの目を気にしなければならない状況で「自分だけ特別扱い」という勇気が持てず、結局困り感を抱えたまま学校生活を送ることのほうが多いのではないでしょうか。計算練習が必要な場合をのぞいて、誰でも計算機が使える、誰でもタブレットを使っていいことにしてみると、校則のない公立中学校では、結局必要な子しか使わず、使用していても「あたりまえ」の雰囲気で偏見やそのことをからかう生徒はいないそうです。「全員にその選択肢がある」というのが本当のユニバーサル」ではないでしょうか。
山口県宇部市では各学校における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領が策定され、それに係る留意事項もまとめられています。例えば学校生活や授業において、障害別にどのような配慮や対応が必要か具体例が示され、教育委員会として教職員全体に対して障害者差別解消法の基本方針を踏まえ、当事者の実態に応じた合理的配慮を考えたよりよい教育諸活動が行われることを徹底するような意志が感じられます。特別支援学級以外の普通級の先生方にとっては、このようなガイドブックは非常に有効でわかりやすく、発達障害や学習障害と診断されてはいないものの、普通学級で困難を抱えている児童生徒への指導のヒントにもなり、学校全体における障害への理解の促進にもつながるのではないかと考えます。
また、留意事項には、教育現場における教育諸活動には、障害のある児童生徒だけでなく、その保護者や障害のある一般市民も参画することが考えられることから、それぞれの人に対する留意事項も網羅されています。例えば授業参観などの授業の場面での合理的配慮の例や、保護者会やPTA総会など保護者関連の行事、運動会や学習発表会などの学校行事における合理的配慮から、災害発生時などの緊急事態における合理的配慮まで記載されており、教職員に対する障害者差別解消の浸透を徹底させるものです。地域の中心である学校から障害に対する理解を波及させるためにも、ぜひ佐倉市でも策定を求めたいと思います。